皆さんご存知ないかもしれませんが、魚には旬が二度あると言われています。例えば、サワラは「鰆」と書くように春が旬で美味しい時期と思われがちですが、実は秋の方が脂が乗っていて美味しいと言われています。タコも夏が旬として知られていますが、その逆の季節の冬場も小柄ながら柔らかみがあり旨みが詰まっていて美味しいと言われています。
真鯛についても同様で、一般的には春の桜が咲く頃が一番珍重されています。しかし、この季節の真鯛は産卵を控えており、体をピンク色に染めています。このピンク色を桜の花に見立てて、春に獲れたものを「桜鯛」と称されています。
先でのお話でもそうですが、この桜の季節の反対の秋の紅葉の季節の真鯛の方が美味しいのではということも言われることもあります。越冬を終えた「桜鯛」は産卵を控えた真鯛で、体が締まり、一見旨そうに思えるのですが、実際にはその栄養を腹の中に宿す子に取られています。しかし、この秋の紅葉シーズンの季節に獲れる真鯛は、5月から6月に産卵を終え、来年に向け、越冬するために食欲が旺盛となります。高水温となる夏にはその餌となるエビやカニなどが活発に動き始める時期でもあり、甲殻類、貝やイカナゴなどを多量に食した真鯛は、丸々と肥えていきます。これらの肥えた真鯛が潮流の速い地域に棲んでいれば、例えるなら、その真鯛はグルメなスポーツマンのようなものへと成長します。このような環境で育った真鯛はウロコに赤みが増して、赤らんできた「もみじ」にちなみ、11月から12月半ばに獲られる真鯛は「紅葉(もみじ)鯛」として美味しい真鯛として珍重され販売されていくのです。